児童文学に描かれた食(特にお菓子やハーブ)をイギリスの生活・文化とともに紹介する本を多数著している北野佐久子さんの新しいご本がでました。今回はなんとミステリーの女王アガサ・クリスティーの小説に出てくる食を解説したものです。北野さんの本はいつも、素敵な(美味しそうな!!)写真がいっぱいなのですが、この新刊も期待を裏切らない美しさ。もう見ているだけでお腹がグーグーなってしまいそうです(笑) クリスティーの作品にこんなに食べ物のシーンがいっぱいあったのかと改めて驚く方も多いと思いますが、そういった読者が読み飛ばしてしまいそうな何気ない生活の一端を丁寧に描くことで物語に奥行きが与えられていくのだなと、北野さんの解説を読みながら思いました。ミステリーがそれほど得意でない方も、こんな読み方ができるのならクリスティーに挑戦してみたいと思われる本です。

「クリスティーのミステリーは、そこに描かれた食べ物や生活を通してさらにイギリスを知ることにつながりました。その喜び、楽しさをお伝えしたい、それがこの本に託した私の願いです。」と北野さんはまえがきに書いています。イギリス好き、文学好き、ミステリー好き、美味しいもの好き……いろいろな方に楽しんでいただける1冊です。

『イギリスのお菓子とごちそう~アガサ・クリスティーの食卓』北野佐久子 著/二見書房 1800円+税
※この作品は1998年に婦人画報社から出版された『アガサ・クリスティーの食卓』を大幅に加筆・修正・改題し刊行したものです。