ベスト👍 フィクション
『おとなってこまっちゃう』
ハビエル・マルピカ 作
宇野和美 訳
山本美希 絵
偕成社 刊
2022年1月 刊行
定価1,760円(税込)
223ページ
対象:小学校高学年から

メキシコからやってきたファミリーコメディ

パパとママが離婚して、今はママと住み込みのお手伝いさんのデルフィーナと暮らしている9歳のサラ。
ある日、おじいちゃんの爆弾発言=再婚発表(それもママと同じくらいの年の人と!)にママの怒りが爆発します。大好きなおじいちゃんの結婚式にどうしても出席したいサラは、親友やパパ、叔父さんたちを巻き込んでママの説得・懐柔作戦を試みるのですが、事態は思わぬ方向に展開し……。

人権派弁護士としていつもは弱い立場の女性の味方のママですが、自分の父親の再婚となると理性が飛んでしまうようです。「絶対に再婚相手とは会わない」というママを、どうにかして(騙して⁉)彼女に会わせようとするサラの奮闘ぶりがおかしく、ハラハラの連続で読者を最後まで引っ張っていきます。

世間体を気にしたり、相手の感情を忖度したりーー大人の世界はサラの目を通してみるとおかしなことばかり。大人たちはちっとも完璧ではなく、時にサラよりも子どもっぽい行動をとる「困った存在」として描かれます。でもそんな自分を気取らずに子どもに見せる正直な大人たちは、ありのままの自分でいることの素晴らしさを身をもって示しているようで、私にはかえって頼もしく見えました。
愉快な物語の中に現代の社会や家族が抱える問題を明るくさりげなく描き、笑いながらも考えさせる、メキシコ発(初!)の児童文学です。(か)

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