ベスト👍フィクション
『キプリング童話集 動物と世界のはじまりの物語』
ラドヤード・キプリング 作
ハンス・フィッシャー 絵
小宮由 訳
アノニマ・スタジオ 刊
1980円(税込)
218ページ
対象:小学校中学年以上

キプリングが眠る前の子どもたちに語って聞かせた物語

『ジャングルブック』『少年キム』などで有名なイギリス人初のノーベル賞作家、ラドヤード・キプリングが今から120年前に発表した作品。もともとは三人の子どもたちのためのベッドタイムストーリーだったという本書は、親子の間で交わされたであろう楽しい会話が行間から漏れ聞こえてきそうな愉快なお話集です。

現在のように誰もが気楽に海外旅行に行ったり、テレビで遠い国の野生動物の映像が見られる時代ではなかった100年以上前、若い頃にいろいろな国で暮らし、またたくさんの旅をしたキプリングが語り聞かせたお話は、どれほど未知の世界へ憧れと興味を子どもたちの心の中にかき立てたことでしょう。同じようにこの物語を読む100年後の読者も、キプリングおじさんのラッパばなしに思わず笑い声があふれて出てしまうに違いありません。

「どうしてラクダには、こぶがあるの?」「どうしてサイの皮は、シワシワなの?」などの動物なぜなぜ話のユニークさはもちろんのこと、後半の「手紙は、どうやって、はじまったの?」や「スレイマン王と足をふみならしたチョウ」は大人をもうならせる展開と結末です。こんなお話を聞きながら眠ることができた子どもたちのなんと幸せなこと! キプリングの愛情あふれる愉快な物語と、フィッシャーの表情豊かな動物たちの絵をお楽しみください。(か)

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