『クレーン男』『タイコたたきの夢』『レクトロ物語』などの作家、ライナー・チムニクのデビュー作『熊とにんげん』が久しぶりの復刊となりました。作者自身による絵と物語がかもし出す独特の雰囲気が魅力の作家ですが、翻訳者の上田真而子さんが「人間を鋭く描きだしながら、その眼に詩情があり、しかもそれがときに皮肉なユーモアをともなっていて、大人のあいだにも広く愛読者をもっているというのが、なるほどとうなづけました。」とあとがきに書いている通り、本当に不思議な作品です。
きっと、一度読んだくらいではわからなくでもいい、そういう本なのだと思います。わからなくても何か心に残るものがあり、読み返すたびに少しずつ違った発見がある。読書の喜びがしみじみと感じられるそんな作品なのですから。
※この本は12月に亡くなられた上田真而子さんの最後のお仕事になりました。

『熊とにんげん』ライナー・チムニク作・絵/上田真而子訳/徳間書店 1400円+税