ベスト👍フィクション
『キャラメル色のわたし』
シャロン・M・ドレイパー 作/横山和江 訳
すずき出版 刊
2020年8月 発行
本体1,600円+税
309ページ
対象:小学校高学年以上

チョコレート色の家族とバニラ色の家族の間で。。。

両親の離婚のために、1週間ごとに母親と父親の家を行き来しなければならない11歳のイザベラ。自分がまるで半分に切り分けられているように感じるイザベラにはもう一つの悩みがありました。白人の母親と黒人の父親の間に生まれた自分。白人と黒人のアイデンティティに悩みながらも、「キャラメル色」の肌と縮れた茶色味の髪に黒人としての誇りも持ち始めていました。
11歳まで黒人差別を特に意識したことのなかったイザベラでしたが、ある日学校で警官が動員されるほどの差別事件が起こります。
裕福な弁護士である黒人の父親とカフェテリアで働く白人の母親。
オフの時でもいつも“キチっとした服”を着ている父親と、どんなラフな格好でも決して警官から見とがめられることのない母親を週ごとに見比べるイザベラに父親は言います。

「わたしたちは一番いいかっこうをすることが重要なんだよ」

両親の家を週ごとに行き来するという複雑な家庭環境にいながらも、両親と両親の新しいパートナーに愛され大事にされるイザベラの物語には、『ザ・ヘイト・ユー・ギヴ』(岩崎書店/2018年新刊メルマガベスト作品)のような重々しさはありません。でもだからこそ、アメリカの比較的恵まれている層の子どもたちの中でも、黒人差別が
いまだに切実であることをこの作品を読んで感じました。

後半の大事件に、ハッと息を飲みましたが、余韻の残るラストに安堵しました。
読後感がよく高学年から手渡せる作品です。ちなみに作者のシャロン・ドレイバーは
同じすずき出版から出された『わたしの心のなか』(2014年新刊メルマガベスト作品)の作者でも
あります。                  (く)

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