1984年にペンギン社から出版されて長く品切れになっていた、マリー・ホール・エッツの『あるあさ、ぼくは…』が好学社より復刊となりました。エッツらしい素朴で静かな、子どもの気持ちを描いた作品です。原書は1965年といいますから、もう60年近くたっているものです。『わたしとあそんで』も『もりのなか』も、エッツの作品は出来事として劇的な事件が起こることはありません。けれど、子どもの日常(と心)の中には、大人が想像する以上に大きなドラマが潜んでいるのだということをどの作品も気づかせてくれます。この『あるあさ、ぼくは…』も例外ではありません。

小さなぼくは、その朝出会った動物たちの真似をしながらあちこち歩き回ります。「どういうふうに ~~するのか、やってみせてくれない」という丁寧な問いかけの繰り返しで、ぼくと動物たちの交流が描かれます。最後にお父さんを見つけて“ぼくらしく”駆けだしていくところで、静かな物語が一気に動きを見せるところは見事です。

一見地味に見える中に生き生きした物語がひそむエッツの絵本を、どうぞゆったりとお楽しみください。

『あるあさ、ぼくは…』マリー・ホール・エッツ作/まさきるりこ訳/好学社 1650円(税込)

★ご注文、お問い合わせはお電話、Fax、メールにて承ります。
売場直通電話 03-3563-0730
Fax 03-3561-7350
メール narnia@kyobunkwan.co.jp