『やまゆり』
『やまゆり』
たてのひろし さく
小峰書店 刊
2026年6月21日 発行
2200円(税込)
32ページ
分類:ノンフィクション
対象:幼児から
森に風が吹く、森に音がする、森がうごめく、死んでいく、生きていく
2023年に刊行され、日本絵本賞を受賞した『どんぐり』に続く姉妹編です。本書もテキストはなく、やまゆりの成長する姿を描いた精緻な絵のみで進行します。
まず表紙のやまゆりの花の姿に魅了されます。むーんとする強烈な甘い匂いがしてきそうです。そしてページをめくると芽生えの様子が描かれています。背景は描かれていないので、白地をバックにやまゆりや、そこに集まる様々な虫たちがダイナミックに目に飛び込んでくるのが印象的。
やまゆりが成長するにしたがって、集まってくる虫の種類も数もどんどん増えてきます。ひとつの花が咲くことが、ほかの命の場になっていることが静かに伝わってきます。テキストがないことで絵に自然と引き付けられるのだ思います。
また絵本形態だからこその表現だと感じられるページがいくつもありました。花に虫たちが集まっているページなどは実際にはありえないと思いますが、ギュッと凝縮して描くことができるのが絵本のよさです。
個人的には雨粒が飛んでいる場面が特に好きです。かたつむりの殻に当たるさまや、葉っぱに当たってはじけるさまが実に繊細に描かれているのです。どのページも細かくて、見飽きない!
どの生きものも知っていれば、きちんと同定できるのもおもしろいのです。テントウムシやカマキリ、アリにバッタ、カナヘビ等々。生きもの好きにはたまらないでしょう。
やまゆりが枯れていくさまもはかないようで、また美しく、めぐる季節と命を感じられます。 (す)
