『ぼくたちは、あらそうために生きるのか?』
『ぼくたちは、あらそうために生きるのか?』
山極寿一 文
あべ弘士 絵
偕成社 刊
2026年6月 発行
1540円(税込)
32ページ
分類:絵本
対象:小学校中学年から
世界的な霊長類学者がこどもたちに贈る希望のメッセージ
世界的な霊長類学者の山極さんの子どもに向けての著作はずいぶん久しぶりだと思います。動物の絵ーーなかでもゴリラはピカイチ! のあべ弘士さんとタッグを組んでの本書は、実に根源的なメッセージに富んだ1冊になっています。だからといって決して声高に叫ぶのではないところが胸に響きます。
山極さんは長くゴリラの研究をされてきました。それは同じ「ヒト科」のゴリラを観察することで人間についてよく知ることができるのではないか、と考えたからです。ヒトは700万年前からずっと、相手の気持ちを思いやる共感の気持ちを育てながら進化してきました。
なのに、ゆたかな土地をうばいあう戦いが始まります。そして、それは現在も続いているのです。生きるためにヒトが争うのは、生きものとしての本能だから戦争は終わらない、という人もいますが、山極さんは「果たしてそうだろうか?」と疑問を呈します。山極さんがこれからを生きる子どもたちへこめた希望とは? ーーぜひ、多くの人に手にしてほしいメッセージです。
それからページによって描き方を変えているあべさんの絵も実にいい! こんな描き方もするんだってかんじの絵もあって、今さらながら新鮮な驚きがあります。
もちろん、ゴリラの絵は秀逸です。特に5ページの子どものゴリラの姿は愛らしさに満ちています♪
子どもに向けた本ですが、当然のことながら大人だって、大人こそかみしめて読まなくちゃいけないのでは、と思いました。
偕成社のホームページには内田樹さんの書評が載っています。とても熱のこもった素晴らしい文章なので、そちらもぜひ読んでみてください。 (す)
