『ウソ学校』

『ウソ学校』
チョン ソンヒ 著
呉 華順 訳
影書房 刊
2026年1月 刊行
定価1980円(税込)
217ページ
分類:フィクション
対象:中学生以上

校長の陰謀に生徒たちはどう立ち向かうのか?

その存在が国民に対して秘密にされている孤島の特別な中学校では、全国から優秀な子どもが選抜され、国家に尽くす人材の育成が行われている。毎年30人の新入生のうち、次の学年に進めるのは20人という厳しい現実があるものの、学費も生活費もすべてを国が賄ってくれることや、卒業後は政府の指定する職に就くことで安定した将来を約束されることなどがあり、子どもたちは生き残りに必死になっていた。この学校は「国益を増進し、世界をリードするウソをつける人材を育てること」を目的とし、子どもたちに「役にたたない良心を捨てる」よう徹底した教育を行う“ウソ学校”なのである。

この学校に通う1年生のナヨン、イネ、ジュヌ、ドユン。偶然、友人となった4人は、授業中にイネとドユンが回していて校長に取り上げられたメモを取り返すため、校長室に忍び込む。朝礼中に生徒が突然倒れるなど、学園ではこれまでにも不審な出来事があり、調査にやってきた医師が校長室に隠しカメラを設置しようとしている場面に出くわした4人は、校長の秘密を探ろうと密かに行動するのだが、逆にそのことが校長に知られて窮地に追い込まれてしまう。校長は4人に「密告者を探し出せ」と命じ、不信感から互いを探り合って疑心暗鬼に陥った4人の見せかけの友情はあっけなく崩壊するのだった。絶望の淵に追い込まれたナヨン、イネの取った行動は――。

物語はオープンエンディングで、子どもたちがどのような決定を下したのかは描かれません。読者はそれぞれに4人の心の内を想像し、その結果の行動を思い描くことになります。「国家が子どもたちにウソを教える」ことがナンセンスと言い切れないくらい、今の世の中はよくできたフェイクに溢れていますし、堂々とウソをつく政治家の姿を日々目にする現実を前にして、私たちはどうやって自らの良心を保ち続けたらよいのか現実と物語の双方から考えさせられます。しかし「騙されないために誰も信じない」と言い切っていたイネが、慕っていた真実学の先生を信頼し続けたことや、自分をもだましていた心の内に気づいて、その醜さに向き合う覚悟を示したことなど、ウソで塗り固められた中から尊い真実が浮かび上がってくる最後には、わずかながら希望の光が見えるようです。

「見えすいたウソが通用しない時代」だからこそ、良心や真心や愛が人々を強く確かに結びつけるのだということを信じ、言葉と行動に誠実さを失わないで生きたいと思わせてくれる作品です。(か)