『秘密のフリンドル・ファイル』
『秘密のフリンドル・ファイル』
アンドリュー・クレメンツ 作
田中奈津子 訳
講談社 刊
2026年2月 発行
1980円(税込)
256ページ
分類:フィクション
対象:小学校高学年から
全米を巻きこんで、ジョシュとクラスメートの、言葉をめぐる戦いがはじまります!
1996年に『合言葉はフリンドル!』で作家デビューし、2019年に亡くなった学校小説の帝王と呼ばれるアンドリュー・クレメンツの遺作。これは『合言葉はフリンドル!』の続編でもあります。
カリフォルニアに住む中学生のジョシュはプログラミングが得意な少年です。彼は国語の授業に不満を持っていました。担当のN先生が生徒たちにノートパソコンを使わせないだけでなく、紙の本『英語文章ルールブック』を携帯させ、宿題は手書きで提出という、徹底的に便利なデジタル機器を排除したアナログな授業を行うためです。
ある日、母親から借りたペンに“フリンドル”という奇妙な言葉を見つけたジョシュがインターネットで調べてみると、それはかつて11歳のニコラス・アレンという少年が発明した言葉だということがわかります。ネットの写真が国語のN先生に似ていることに気付いたジョシュは、N先生とフリンドルの秘密について、友人のバネッサやクラスメートを巻き込んで調査を始めるのです。果たして二人は同一人物なのか、そうだとしたらなぜ先生はそのことを隠しているのか―― 秘密に迫るためにジョシュは、知恵を使って先生に揺さぶりをかけたり出し抜こうとしたり、その真剣勝負に読者はハラハラドキドキします。
フリンドルならぬ“フリンディ”という言葉を教室で流行らせてみたり、授業をハッキングしてノートパソコンの使用を認めさせたり、ジョシュは考える力も行動力もある魅力的な主人公です。先生に対抗してうまいことやっていく一方(そこが痛快な部分でもあるのですが)、その過程でなぜN先生が紙の本や手書きといったアナログな作業を自分たちに課しているのかが分かってくると、教師vs生徒というありがちな対立を問題への対処のための協同へと変化させる柔軟性も持っています。そして、子どもたちが自分の力で考えて行動するように見守り導いているN先生は、物語だからこそ存在し得る素敵な大人といえるでしょう。作者の大人と子ども、双方への信頼が見える作品となっています。
便利に見えた電子書籍の落とし穴や、SNSの影響の大きさなど、現代の子どもたちが実際に直面するであろう状況が物語の中に上手に取り込まれている分、前作『合言葉はフリンドル!』よりは読者対象が上になりますが、ぜひ両方の作品を子どもたちには読んでもらいたいと思います。作中に登場するE.B.ホワイトの『シャーロットのおくりもの』を読んだことのない人は、きっとこの本も読んでみたくなるはずです。(か)
