『こちら日本中学生新聞』

『こちら日本中学生新聞』
川中だいじ 著
柏書房 刊
2026年3月12日 発行
1980円(税込)
315ページ
分類:ノンフィクション
対象:中学生から

民主主義を、現場から見つめ直すーー中学生記者が追う、日本のいま!

この本の存在を知ったときの衝撃、そして実際に手にしたときの衝撃はうまく言語化できません。まずは「えーーーっ!」と驚きが大きかった。
姪っ子と変わらぬ年頃の中学生が体験して、書いたものであるって、にわかに信じがたい気持ちも正直湧きました。というか、姪っ子はこの著者が考えていることを1ミリでも理解、共感できるのかな~と想像し、むむと唸るしかありませんでした。

2010年、大阪に生まれ育った著者は、小学校3年生のときに政治に関心をもったと言います。両親が食卓で政治の話をする環境だったことも影響しているといえるでしょう。とはいえ、自分が小学3年生、9歳か10歳のころの関心事に政治はなかったな~。
2019年の参議院選挙が記憶に残る最初の選挙だったとのこと。そして翌年、大阪都構想の住民投票ではじめての政治活動ーーれいわ新選組のチラシ配りをする。そのとき「子どもを利用するな!」と彼に対して怒る人もいたらしい。その度に「自分の意思で勉強をし、考え、行動している。やらされているわけではない」と説明をしてチラシを手渡していたと言いますが、傷ついてもいたんだとか。それは「子どもには人格はなく、言われたことしかできない、何も考えていない馬鹿だと言われているように感じていたからだ」と言います。
重い言葉だな、と感じて、彼に対して申し訳ない気分になりました。
また、都構想の告示以降、小学校でも友だちとこのことについて話す機会が増えたそう。投票権のあるか否かということではなく、自分の住むまちのことを知ろうとすることや考えることは大切だし、当たり前と思っていたんですって! そうして学校でアンケートをとったり、政治活動は盛り上がっていったとか。そんな折、担任の先生から「政治の話をしてはいけない」と注意をうけますが、それでも変わらずに堂々としていたとあるので、また驚いてしまいました。

「第1章:「日本中学生新聞」創刊前夜」「第2章:G7広島サミットと初会見」「第3章:選挙取材」「第4章:万博・IR取材」「第5章:ルポ 生徒会」「第6章:民主主義を取材する」「第7章:兵庫県知事選」の章立てです。とてもまっすぐに物事を捉えて、真剣に考えている姿は子どもとか大人とか関係ないですね。子どもだからこそのまっすぐさを感じました。大人こそ、この著者に学ぶべきことは多いのではないか、と思えます。
とにかく行動力に拍手! です。
どこを取ってもグサグサ刺さる言葉の連続。付箋貼りまくり状態になりそうですが、なかでも一番響いたのが次の言葉。創刊号に寄せた文章です。子どもにこんなこと言わせちゃだめだ、とも思いますけどね。

「学校などでぼくたちは「良い行いをしなさい」と教えられる。だが、よく考えてみると
大人たちは良い行いをしているのだろうか?
と疑問に思うことがある。
たとえば、
電車やバスなどで優先席に座る人。
用事もないのに歩きスマホをする人。
選挙で票が欲しくて大金を配る人。ーーー(後略)」

今どきの若い者は、と言いがちですが、いやいや、しっかりしているこんな若い人がいることに嬉しくなりました。捨てたもんじゃないって明るい心地に久しぶりになれました。
著者と同世代の人たちはもちろん、大人がしっかり受け止めないといけないですね。 (す)