【たくさんのふしぎ40th】 🤔『雪虫』(品切れ本)

【たくさんのふしぎ40th】🤔 (2013年11月号)
『雪虫』(品切れ本)
石黒 誠 文・写真
福音館書店 刊
2021年3月30日 発行
定価1,430円(税込)
40ページ

北海道民だけが知っている? ふしぎな雪虫

「雪虫」。その名の通り、ひとひらの雪をまとったような体でふわりふわりと飛ぶはかない虫です。
正式名を「トドノネオオワタムシ」といい、植物の汁を吸って暮らすアブラムシの仲間です。私がいくつか見た昆虫図鑑には載っていませんでしたが、北海道や東北地方では毎年秋になると飛び交うお馴染みの虫のようです。この本では北海道富良野地方を舞台に、雪虫のそのふしぎな生態を取り上げています。

それでは、この小さな虫の何がそんなに「ふしぎ」なのでしょう。
それは、雪虫が子どもを産み、その子どもがまた子どもを産むということを1年間に6~7回繰り返すこと、そして「その間に姿も食べるものも変える」ということです。
「それってめずらしいの?」と思われた方もいるでしょうから、もう少し詳しく説明しましょう。まず雪虫の1世代目を「幹母(かんぼ)」と呼びます。アブラムシのような容姿の幹母は灰色でとても小さく、先のとがったストローのような長い口でヤチダモの樹液を吸って成長します。4回の脱皮の後に茶色と黒の縞模様になった幹母は、5月の終わり、卵ではなくじかに子を産みます。
生まれた2世代目の子もまた脱皮を繰り返し、やがて小さな翅を持ちます。初夏、天敵の虫たちから逃れて飛び立った子虫がたどり着いたのはトドマツの木の根元。ここで3世代目となる子を産みます。最初の幹母の孫にあたる3世代目の子虫は、アリと一緒に地中生活を送ります。
こうして地中で3〜4世代が過ぎた秋、またしても翅を持つ雪虫があらわれます。それがあの雪のようにふわりと飛ぶ雪虫です。

短期間にすさまじいサイクルで子を産み、成長する雪虫の1年間を追いかけた写真絵本『雪虫』。ここで紹介した内容はページ量からすると3分の2ほどです。ひとひらの雪のような虫が懸命につなぐ命のバトンは、この後もまだまだ驚異に満ちています。
残念ながら品切れになってしまった作品ですが、ぜひ図書館などで手に取って、雪虫の生へのエネルギーにあふれた世界をのぞいてみてください。 (い)