【たくさんのふしぎ40th】🤔『いっぽんの鉛筆のむこうに』
【たくさんのふしぎ40th】🤔(1985年4月号)
『いっぽんの鉛筆のむこうに』
谷川俊太郎 文
坂井信彦ほか 写真
堀内誠一 絵
福音館書店 刊
2025年4月1日 発行
1430円(税込)
40ページ
「人間は鉛筆いっぽんすら自分ひとりではつくりだせない。」
いっぽんの鉛筆のむこうに、どんな人が関わっているのか想像したことはありますか?
本書は、いっぽんの鉛筆ができるまでを紹介した1冊です。
まず、鉛筆のシンは、何からできているでしょう。答えは、黒鉛。黒鉛は、スリランカのボガラ鉱山でとられ、くだかれています。黒鉛を木のジクではさむのを考え付いたのは、18世紀の終わり、ナポレオンの時代のフランス人だそう。
ジクである木は、スリランカから約15000キロはなれた、アメリカ合衆国シエラ・ネバダ山中で、木こりの手によって切りたおされます。木の名前は、イノセンス・シダー(ヒノキの一種)です。そして、切りたおされた木は、トラックの運転手によって、製材所へ運ばれます。製材された木は、つみかさねて1年間かわかしたあとで、長さ185ミリのスラットとよばれる板にまで加工されるそう。大きなインセンス・シダーからは、15万本の鉛筆がつくられます。品質をたもつための検査には、コンピューターもつかわれているそうですが、はばのせまいスラット、みじかいメモ鉛筆用のスラット、そしてフィンガー・ジョイントとよばれるつぎのあるスラットもつくられ、木片やのこぎりのくずも、かんそうろの燃料や、だんろ用のまき、紙パルプの材料としてつかわれるとのことで、スラットを無駄にしないところが素晴らしいと思いました。
スラットは、メキシコのコンテナ船で運ばれ、アメリカ西海岸と日本のあいだを12日間でむすびます。コンテナは、ストラドル・キャリアとよばれる、巨大なヘイケガニみたいな運搬車でトレーラーにつみこまれ、三菱鉛筆山形工場の塗装部門に運ばれて、鉛筆が塗装されると、お店で販売され、多くの人の手に渡ります。ここまで、世界のさまざまな人の手によって、いっぽんの鉛筆がうみだされていることが、よくわかります。
「人間は鉛筆いっぽんすら自分ひとりではつくりだせない。」と、谷川俊太郎さんは言いました。
情報であふれ、物が簡単に手に入る現代において、物がつくられるまでの背景を考えられる人はどれだけいるでしょう。鉛筆いっぽんを作るのでさえ、多くの人が関わっています。そして、その一人ひとりに家族がいて、私たちと同じように、それぞれの日常を送っています。本書を読むと、短くなった鉛筆を捨てるなんてこと、絶対にできなくなりますよ。鉛筆に限らず、一つの物が作り出されるには、多くの人の労力、そして「思い」があるのを忘れることなく、大切にしたいですね。入学のお祝いにも、最適な1冊です。(み)
