【たくさんのふしぎ40th】 🤔 『うれしたのし江戸文様』

【たくさんのふしぎ40th】🤔 (2021年1月号)
『うれしたのし江戸文様』
熊谷博人 文・絵
福音館書店 刊
2025年11月15日発行
1430円(税込)
40ページ

文様から見える江戸のゆたかさ

好きな洋服を着ると気分が上がります。子どもの時はお気に入りのキャラクターのTシャツを着ていた方も多いのではないでしょうか。好きな柄の服を着る喜びは、今も昔も変わりません。江戸時代の人たちも自分の好きなものや縁起がいいものを題材に文様を考え、茶碗などの日用品や着物を飾りました。そうして生まれた文様は、海を越えてヨーロッパでも人々を感嘆させ、時代を超えて今の人々にも受け継がれています。

江戸時代以前から着るものにも文様は付いていましたが、身分の高いものがその力を示すために身につけていたものであり、身分の低いものが文様のついた着物を着る機会はありませんでした。時代が江戸になり、庶民の生活にゆとりが生まれたことで、おしゃれを楽しめるようになった町人が自分たちの身近なものをモチーフに、文様を生み出していったのです。また、江戸は木綿を使った生地が全国に広がった時代でもありました。 安価に手に入り、夏でも冬でも快適な木綿は染料に染まりやすいことから染物の技術が上がり、着物の種類がさらに増えたのです。

江戸の人たちがつくりだした文様は様々あります。桜や菖蒲、菊、ナデシコなどのお花や枝松、しめ縄などの縁起もの、あるものを代わりに使って表現する「見たて文様」というちょっと粋な文様もあります。私のお気に入りは、野菜の文様と龍田川の文様です。庶民にとって身近な野菜はモチーフになりやすいのでしょう。かぶやなすが連なっていてかわいらしいのです。龍田川は、奈良県にある紅葉の名所です。 川の流れに紅葉の葉が浮かぶ様子が表されており、風情があります。 面白いものでは、おならの文様や、松竹梅の「文字」の文様、猿蟹合戦の文様などがあります。 このように、生活の中にある様々なものに着想を得て、きれいな模様やユーモアの感じられる文様が生まれました。あなたの好きな文様はなんでしょうか。様々なデザインを見ることができますので、楽しんで眺めてみてください。

文様について知ることで、江戸時代の暮らしや、その時代に生きていた人が何を考え、何を大切にしていたのか、見えてきます。江戸時代は身分制度があり、武士によって贅沢を禁止されていました。制約がある中、知恵と工夫で自分たちの暮らしをより豊かなものへと発展させたのですから、何とたくましいことかと感じ入ります。(ほ)