良書発見🔎『ビーストの影』
こちらではナルニア国でおすすめしたい既刊本をご紹介いたします。新刊・話題の本に埋もれがちな本を取り上げています。(良書発見🔎) *6/27現在 在庫2冊
『ビーストの影』(絶版本)
ジャニ・ハウカー 著
田中美保子 訳
レターボックス 刊
1993年1月10日 発行
2,200円(税込)
217ページ
分類:フィクション
対象:高校生以上
フィリッパ・ピアス絶賛の児童文学! 街に現れたビーストの正体とは?
イングランド北部、丘陵地帯のはずれに住むビルは、裕福とは言えないながらも父と祖父と幸せにくらしていました。街の人のほとんどはストン・クロスと呼ばれる紡績工場で働いており、ビルの家族も例外ではありません。ある時、そのストン・クロスが閉鎖になるとうわさが流れます。街の人たちの生活を支えるストン・クロスがなくなる事実に衝撃を受ける大人たち。折しも家畜が何か獣のようなものに襲われる事件が多発し、やがてそれは「ビースト」の仕業として街全体が不安に覆われます。ビーストには懸賞金がかけられ、ビルはビーストを捕えようと躍起になります。
ストン・クロス閉鎖の知らせを一家が受け取った直後から始まる本書には全体をとおして不穏な気配が漂っています。大人たちの生活への不安は怒りとなり、暴動へと向かう気配も帯びていきます。そして子どもたちはそんな大人たちの不安を敏感に感じ取っているのです。そうした恐れ、不安、猜疑、怒りといった人間の内側に存在する負の感情こそ、人々が「ビースト」と恐れるものの真の姿なのかもしれません。ですが、人間の中にあるのはそんな負の感情だけではありません。ビルがビーストを捕えようとするのは懸賞金が目的ですが、それは家族を助けたいという気持ちがあるから。失業してしまった父や祖父のために恐怖の象徴のようなビーストに立ち向かうビルの無謀とも思えるその姿からは、困難に直面する人たちのたくましさ、力強さも同時に感じることができます。
街にビーストが現れる中盤から緊張感が徐々に高まり、物語終盤、ビルがビーストと対峙するところで緊張はピークに達します。果たしては「ビースト」の正体はーー?ページをめくってお確かめください。
本書は日本で1993年に出版されました。現在は絶版となっており、ナルニア国にも限定4冊が残っているのみです。本国イギリスで出版されたのは1985年。同年、イギリスの文学賞、ウィットブレッド賞(2006年からコスタ賞に名称変更/2021年の回をもって終了)の児童書部門を受賞しました。当時この賞の審査員の一人だったフィリパ・ピアスは作品をたいへん評価しており、日本語版の背表紙にはピアスの言葉が記されています。そちらも必見です。(ほ)
