クリーンヒット ⚾ フィクション
『怪談 こわくて不思議な10の話』
小泉八雲 作
小宮由 選・訳
アノニマ・スタジオ 刊
2025年6月 発行
1870円(税込)
112ページ
対象:小学校高学年から

こわいからおもしろい~「耳なし芳一」など代表作を含む10話

日本の怖い話の代名詞ともなっている、小泉八雲の『怪談』。「雪女」「むじな」「耳なし芳一」などタイトルを聞くだけで背筋がゾクッとします。
『怪談』はギリシア生まれのアイルランド人ジャーナリスト、ラフカディオ・ハーンが妻の小泉セツから語り聞かせてもらった物語を再話して1904年に発表した“Kwaidan”の翻訳です。これまでに多くの名訳が生まれ、子どもから大人まで幅広い年齢の人たちに読み継がれてきました。今回、翻訳者の小宮由さんは、これまでの翻訳作品との違いとして「より語りに適した文にしたい」という思いで取り組まれました。というのも、八雲の『怪談』はセツが語ったそのままの再話ではなく、原典をより深く考察し文学的に美しい形に昇華しているため、黙読するには何ら不都合はないのですが、耳からだけ聞いた時には多少難しいところがあるのです。そこで小宮さんは「より語りやすくするため、原文の一部を割愛した」とあとがきに記しています。小宮さんによる『怪談』の翻訳・再話がどのような形でこの有名な古典作品をよみがえらせているのか、ぜひ声に出して読んでほしいと思います。

本書は子どもに語り聞かせることを念頭に収録作品も選ばれています。『怪談』からは6篇、同時期に再話された“Japanese Fairy Tale Stories”(日本お伽噺集)から4編の作品が入っています。特に“Japanese Fairy Tale Stories”のお話は、怖いというよりもどことなくユーモラスで、暮らしの中に自然に怪異があった当時を思い起こさせます。鬼も化け物もただ人々を脅かす存在ではありません。人々も暗がりに潜むそれらを恐れつつも敬い、時には知恵で遣り込める、そのように見えないものとの豊かな関係が昔の日本人の暮らしの中にはあったのだと気付かされるでしょう。

子どもたちは怖い話が大好きです。でも、単に怖がらせることだけを目的に書かれたような本は、その瞬間消費されるだけですぐに消えてしまいます。怖くて、不思議で、美しく、いわく言い難い感情を心の中に呼び覚ます八雲の『怪談』のような作品こそ、子どもたちに伝える価値があると私は信じています。(か)

※本書は装丁も美しいものです。それについてはナルニア国日記でご紹介していますので、よろしければぜひお読みください!

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