ベスト👍 ノンフィクション
『「ヒロシマ 消えたかぞく」のあしあと』
指田和 著
ポプラ社 刊
2022年7月 発行
定価1760円(税込)
239ページ
対象:小学校高学年から

当たり前の日々と未来を消し去る戦争や原爆。その途絶えたあしあとを追いかけたノンフィクション。

本書は、課題図書にもなった2019年に出版された写真絵本『ヒロシマ 消えたかぞく』の姉妹編と言えそうです。この写真絵本がどういった経緯で出版に至ったかーー偶然、広島平和記念資料館で開催されていた「新着資料展」に著者が足を運んだのがきっかけーーを丁寧に綴り、1冊の本を通して新たな出会いがあったことなどが綴られています。
写真絵本の家族の遺族から預かった古いアルバムーー。1500枚以上あった写真から、写真絵本には収まらなかった写真も掲載されています。どの写真も笑顔が溢れ、ごく当たり前に日常を生きていた人の暮らしをうかがえます。この「当たり前」を一瞬で奪うのが原爆であり、戦争なのだと実感できるでしょう。

写真以外にも当時を知ることができる資料も豊富に配され、理解する一助となっています。

インターネットである程度のことはすぐに知ることができる現代ですが、人に会って話を聞くいて知る。このことの大切さも感じた1冊です。それに関してこの著者は、実に丁寧に取材をしている。本書はその結晶です。

あとひとつ、深く感じたことがあります。原爆で広島の町は一瞬で破壊され、たくさんの人の命が奪われた、と言いますが、そのたくさんの命にはそれぞれに、この本の鈴木さん一家のように家族の歴史があり、子どもたちには未来があったのだということ。それを考えると戦争って本当にむごいものです。

ぜひ、写真絵本『ヒロシマ 消えたかぞく』と一緒に読んでみてください。今夏、家族で読み合うのもいいかもしれませんね。 (す)

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