ベスト👍 ノンフィクション
『海にしずんだクジラ』
メリッサ・スチュワート 文
ロブ・ダンラヴィ 絵
千葉茂樹 訳
BL出版 刊
2023年8月1日 発行
定価1980円(税込)
34ページ
対象:小学校高学年から

海底1500メートルで繰り広げられる50年に渡る「大宴会」

約70年間生きて寿命が尽きたクジラは深い深い海の底にゆっくりと沈んで行きます。
水温も低く、高い圧力がかかる深海ではクジラは尽き果てるまで何十年もかかることは
珍しくありません。

真っ先にやってくるのはヌタウナギ。何週間も食べ物にありつけなかったウナギたちにとっては
めったにないご馳走です。
やがていろいろな生き物たちがクジラの死体を片づけに、次々とやってきます。
脂身のかけらを食べ、小さな残り物をほじくるように食べ、一年半が過ぎる頃には小さなヨコエビの
仲間たちが骨についた肉をしゃぶりつくします。

クジラの骨がきれいにむき出しになっても、まだまだ終わりではありません。
ゾンビワームと呼ばれるホネクイハムシがびっしりと骨を覆い、酸で骨に穴をあけていきます。
ホネクイハムシの根に住み着く共生バクテリアは骨の油分とタンパク質を取り込みます。
何年も何十年もかけて、小さなバクテリアたちは、クジラの骨を食べながらガスを出し、そのガスを
栄養にしてたくさんの種類の深海微生物たちが育っていきます。

クジラの死体はまるで深海のオアシス。
半世紀にも渡り、何百種、何百万もの深海の生き物たちの命を支え続けます。

暑さで、へとへとになっている身体と心でしたが、分刻みの地上とは全く違うゆったりとした深海の
時間の流れにすっかり癒されました。

夏休みも残りわずか、子どもたちと一緒にこの絵本を開いて、想像を超える深海の世界を
そっとのぞいてみませんか?                   (く)

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