昨日、NHK-Eテレの“グレーテルのかまど”で『ホビットの冒険』のシードケーキが紹介されたお話をしましたが、今日もその続報です。番組の後半には、元編集者で児童文学者の斉藤惇夫さんが出演され、瀬田貞二氏の言葉の魅力について語っておられました。

「あ、斉藤さんだ~」とテレビをみるくろみみくん。

瀬田貞二氏の日本語には何度も読み返したくなる魅力があると語る斉藤さん。読者から尊敬と愛情をこめて“瀬田節”と呼ばれるその独特の言葉遣いは、子どものときに出会うと特に忘れられないものです。(『三びきのやぎのがらがらどん』の「これでめだまはでんがくざし」とかね!)

 

瀬田さんが絵本・児童文学についてどのような考えをもっていらしたのか、テレビでも取り上げられた「小さい子どもたちが絵本に求めているのは、生きた冒険なのです。絵本は、手にとれる冒険の世界にほかなりません。」というのは『瀬田貞二 子どもの本評論集 絵本論』の中の1節です。今もなお子どもたちの心をとらえて離さない数々の作品を翻訳した瀬田さんの言葉は、子どもの本を愛する人たちの胸にずんと響きます。

なぜか成り行きで冒険の旅に出ることになってしまったビルボ、けれどその旅を終えて戻った彼はガンダルフをして「あんたは、どこかえらく変わったなあ! もうむかしのホビッドじゃないわい!」と言わしめます。旅とは人を成長させるものであり、またビルボの旅を共にした読者もこの本を読む前とはちょっぴり変わっているかもしれない。よい本に出合う喜びを、こんな時期だからこそたくさんの子どもたち(もちろん大人も!)に味わってほしいと願います。

『ホビットの冒険』J.R.R.トールキン作/瀬田貞二訳/岩波少年文庫 上:760円+税/下:680円+税

瀬田貞二の言葉
『幼い子の文学』瀬田貞二著/中公新書 700円+税
『瀬田貞二 子どもの本評論集 絵本論』福音館書店 4500円+税
『瀬田貞二 子どもの本評論集 児童文学論』(上下巻分売不可) 福音館書店 10000円+税

★“グレーテルのかまど”再放送は総合毎週金曜日の午前11時5分~、Eテレ毎週月曜日の午前10時25分~